虫草農園が大切にしていること

ここ白州の地では、落ち葉を集め、それを堆肥として積んで置くと、どこからともなくカブトムシが現れてそこに卵を産んでくれます。半年後、その堆肥を天地返しすると、丸々と太ったカブトムシの幼虫たちがたくさんでてきます。 カブトムシを始め、里山に棲む生きものの多くは(繰り返されたきた淘汰による変化で、なんと遺伝子レベルで)ヒトの農的な暮らし方に適応変化していることを里山に住むようになって実感しました。 ところがです。 ここ100年ほどというごく短い間にヒトは暮らし方を大きく変えたので、ヒトと共に里山で暮らしていた生きものたちはヒトが行う大きな環境変化に追従できなくなっているように感じます。 化成肥料に頼り、ヒトが堆肥を積まなくなってしまうとカブトムシたちは生きていけなくなってしまうのです。 もうひとつ……。 いまは滅んでしまった恐竜たちが元気だった頃、植物たちも活性化していて元気に生きていました。その頃はいまよりも空気中の炭酸ガス濃度が10倍以上も高く、植物たちも巨大化し光合成により炭酸ガスを吸収固定しながら世代交代を行ってきました。その時間はなんと中生代だけでも1億年以上も続いたと言われています。 そして、この頃のそうした植物たちの残渣がいま我々が便利に使っている石油です。違った説もあったのですが、石油の中に含まれる葉緑素などのバイオマーカーにより、いまはこの化石燃料説が有力とされています。 1億年以上というベラボウな時間をかけて固定された炭化水素(=化石燃料)を湯水のように掘り出し、このところのたったの100年ほどの間で大量に消費してしまったのだから地球が急激に温暖化するのも当然です。そんなこともあって虫草農園では、なるべく化石燃料を使わない暮らし、あるいは古い道具であっても捨てずになるべく直しながら使っていく暮らしを模索しています。 2輪駆動という今では珍しい古いトラクターを譲り受け、天ぷら廃油で動くように改造し使っています。そのて天ぷら廃油は集落のみなさんが捨てずに取っておいてくださった貴重な廃油。 あるいは中古の電動軽トラやEV軽バンを手に入れ、車庫の屋根に貼った中古の太陽光パネルで発電しそこからの充電でそれらを走らせていたりします。 虫や草が好きなので農薬や除草剤は使用せず、ビニールマルチや化成肥料もなるべく使わずに、刈草をマルチとして使い、落ち葉を積んで堆肥をつくり作物を育てています。 雨が多く季節の移り変わりがある日本の里山の生態系はとても豊かで、毎年毎日、新しい発見がたくさんあります。 しかしこうした農は効率が悪く、何をするにも時間はかかってしまうのですが、昔のように自給用を中心に、少量多品目で作物をつくってみると、周囲の生態系の多様性が見違えるように変わることに驚かされます。 かつてのように、ヒトが生きることも自然の生態系の一部になれたら素晴らしいなぁ、との思いで、「自給知足」をモットーに1996年頃からこの地で「虫草農園」という名前の小さな農園をはじめました。 農的な暮らしをメインに、家族でできる無理のない範囲で、衣食住+エネルギーの自給を目指しています。 自動車の燃料や暖房などヒトが暮らす上で必要なエネルギーもなるべくお金によらずに自給していく暮らし方です。現代の最新技術や、まだ使えるのに捨てられてしまっているモノたちをうまく活かしながら暮らすことで、意外とお金がなくても暮らしていけることも分かってきました。 生活をする上で必要となるお金が少なくてすめば、それだけお金稼ぎのための時間も少なくすることができます。 また、各地でこうした暮らし方をする人が増えることで、地域の生物の多様性は確保され自然の生態系もより健全な方向に移行するのではないかと夢想しています。そして何より、この暮らし方、楽しいのです! でも、こうした暮らし方は、虫や草に優しい一方で、減速し逆行しようとするヒトやコトに対しては厳しかったりする側面もあり、まだまだいろいろ至らないところが多いのですが、それにこりず今後ともお付き合いいただけたら嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。